訓練(第一回)


無事にFTSPのApproveも貰い、晴れて訓練を受けることができるようになった。さっそくグアム行きの航空券と宿泊先のAirbnbの予約、レンタカーの予約を済ませてグアムに渡った。グアムで入国するには45日以内の滞在であればG-CNMI ETAというグアムと北マリアナ諸島に短期滞在する場合の認証でも良いらしいのだが、僕はESTAを持っているのでそれを用いて入国した。G-CNMI ETAとやらがある辺りが、グアムがアメリカの準州で、アメリカであってアメリカでないと感じる一端である。

6月の飛行時間と訓練費用

6月の訓練の時間と費用は次の通りだった。

Flight Time Briefing Aircraft rental Instruction Briefing Facility Fuel Total
2025/6/6 0.6 $265.00
2025/6/7 0.9 1.3 $162.00 $45.00 $65.00 $20.00 $18.00 $510.00
2025/6/8 1.1 0.1 $198.00 $55.00 $5.00 $20.00 $22.00 $300.00
2025/6/10 1.0 0.1 $180.00 $50.00 $5.00 $20.00 $20.00 $275.00
2025/6/11 1.0 0.2 $180.00 $50.00 $10.00 $20.00 $20.00 $280.00
2025/6/12 1.2 0.4 $216.00 $60.00 $20.00 $20.00 $24.00 $340.00
2025/6/13 1.5 0.2 $270.00 $75.00 $10.00 $20.00 $30.00 $405.00
2025/6/14 1.5 0.1 $270.00 $75.00 $5.00 $20.00 $30.00 $400.00

6月6日に初めて訓練校に行った。初日は操縦体験を受けるとメンバー入会費$200が免除されてお得だと窓口のお姉さんから聞いていたので操縦体験コースを申し込んだ。最初は、55 ktで操縦桿を引いて離陸すること、Vy (Best rate of climb)は72 ktなので離陸後の上昇は72 ktで行うこと、離陸後の旋回は高度計が600 ftを示してから行うことなどを習った。(600 ftなのは、PGUMが約300 MSLでそれに300 AGLを足して、のはず。)

昨今は円安ドル高だが、幸いにして1ドル80〜100円くらいの頃からアメリカの口座に米ドルを持っている。この口座のデビットカードを使って支払いをした。

燃料

7日からはチェックリストの使い方、飛行前点検を習った。オンライン座学コースでは燃料は青色だと学んでいたのだが、飛行前点検でサンプリングした燃料は青くなかった。青色のガソリンは航空用の100LLというグレードのガソリンで、100LLはオクタン価 100で少量の鉛 (Low Lead)を指す。青くない理由を聞いたところ、自動車用の無鉛ガソリンを使用しているからだそう。どうやらグアムでは100LLが供給されなくなったため、FAAに届出をして自動車用のガソリンを使用する許可を貰っているそうだ。調べてみると、Foam-337を提出して”Supplemental Type Certificate for the use of Auto Fuel”を得ているっぽい。

自動車用のガソリンを使用するとエンジンの温度が上がりやすいとのこと。要は、グレードの低いガソリンは燃えやすいが燃焼温度が高いことに由来するのだと思う。オンライン座学コースではMixtureの調整について学んでいたのだが、こちらでの訓練のときにMixtureはFull richのままでと習ったのも自動車用のガソリンを使っているからなのだろう。初心者にはEGT(排気温度)を見ながらMixtureを調整するという手間が無いのは大変にありがたいが、余所の機体を借りて操縦するときに困るなぁとは思っている。まぁ余所で操縦するのはライセンスを取ってからだろうし、そのときに余裕を持ってMixtureを調整するということを練習すれば良いかなと思っている。

Cessna 172は1950年代の設計だからか、MixtureもCarburetor Heatもパイロットがコントロールしなければならない懐かしのキャブレター式である。キャブレターというのは燃料を霧状にして空気と混ぜる機械式の装置なのだが、今どきの自動車ではインジェクションシステムで温度や気圧、酸素量などに応じて効率の良い燃焼が行われるように電子制御されている。キャブレターは負圧を利用してエンジンの吸気に燃料を混ぜる仕組みなのだが、圧力を下げると吸気した空気の温度は下がるわけで空気中の水分が結露したり凍結したりする。凍結をするとエンジンに入ってくる燃料混合気が減ってエンジンの回転数が下がってしまう。Carburetor icingと呼ばれる現象である。

給気する空気の温度を上げれば凍結しづらくなるので、排気ガスの熱を利用して吸気を温める装置がCarburetor Heatである。いつも温めておけばと思うかもしれないが、吸気の温度が上がると吸気した空気は膨張して薄い空気になってしまうわけで、相対的に燃料が濃く、効率の良い燃焼が行えなくなってしまう。それが故にキャブレターヒートは常時はOFFである。チェックリストにある離陸前のテストでキャブレターヒートをテストしてエンジンの回転数が下がるのを確認するステップがあるのだが、ここの訓練機の場合は自動車用のガソリンを使っているからだろう、下がらない。

9日は天気が良くなかったためにお休みに。

11日にフラップを使うこと、ゴーアラウンドを習っていたのだが、ゴーアラウンドの後に空港に近づいている他機が居るからショートアプローチをするように管制から打診があり、教官に操縦を代わりショートアプローチを見せてもらった。

Stall and recovery

12日〜14日はストール(失速)とリカバリーの操作(maneuver)を反復練習。ストールはもっと訓練の後段になってからやるものだと思っていたのだが意外と早い時期に習った。ストール&リカバリーは機体をわざと失速させて回復するという操作で、パワーオンとパワーオフ共にやった。パワーオンはフルスロットルの状態でピッチを上げてAoA(迎角)を作って失速させるもの、パワーオフはエンジンを1500 RPMまでスロットルを絞ってフラップを30°まで下げ、そこでエンジンをアイドルにしてからピッチを上げAoAを作って失速させる。

安全に飛行機を操縦するために身につけているべきことであるのは分かるが、無茶なAoAを作って翼から空気(の流れ)を剥がすということに当初本能的な恐怖感を覚えた。例えるなら、転けはじめたところで持ち直す練習をするから体を無茶な方向に倒して転けてみましょうという様なものである。

当初はビビって煮え切らずに操縦桿を引き切れなかったのだが、教官に実際に例を見せて貰い、何度か反復練習をするうちに慌てず失速に入れられるようになってきた。僕は、一、二度、教官に実際に操作をしてもらって機体にこんな挙動をさせてもこのくらいなら大丈夫なんだという経験をすれば、安心してその範囲での無茶ができるようになるらしい。

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