Kindleで好みのフォントを使う方法(Mac編)


なかなか気が向かず時間が取れず、記事が書けずにいましたが、Kindle DX Global Wirelessも出たことですし、Kindleに元から入っているフォントと好みの日本語書体を合体させて、Kindleで使う方法の説明を書きます。

全体の流れ

Kindleで使うために好みのフォントを作るのは、とても簡単だったりします。(FontForgeというソフトを使うだけです。)
とはいえ、Macで快適に使えるFontForgeなどを見つけ出すのはちょっと面倒だったりしますので、そういうコツを含めて書いていきたいと思います。

  1. フォントの編集に使うソフトウェア、FontForgeをMac(PC)にインストールする。
  2. Kindleから元々インストールされているフォントを取り出す。
  3. フォントを好みに応じてマージ(合体)したり、太さの変更を行う。
  4. Kindleにインストールする。

Mac編なので、Windowsの方は適宜読み替えをしてくださいな。
Windows版は、 http://www.geocities.jp/meir000/fontforge/ の非公式ビルドを使うと楽らしいです。(をぢの日記 で知りました。)

FontForgeのインストール

FontForgeは、OpenTypeフォントやTrueTypeフォントといったアウトラインフォント(ベクターフォント)を作成したり編集することができる、オープンソースソフトウェアです。
Mac版のバイナリも用意されていて、ここからダウンロードできます。ダウンロードしてzipを解凍すると、中にpkgが入っていますので、ダブルクリックするだけでインストールが可能です。ただ、これはちょっとだけ難点があって、メニューやダイアログが英語のままです。今試しに落として入れたら日本語で出ました。

私は当初、上記のパッケージを使っていましたが、MacPortsからインストールしたものだとメニューやダイアログが日本語化されるので、MacPortsでインストールしたものを使っています。しかし、MacPortsをインストールしたり使うにはXcodeなどのインストールもしなければいけませんし、Unixの知識を要しますから、MacPortsってなんじゃいと思った方にはオススメしません。

Kindleからオリジナルのフォントを取り出す

Kindleには大きく分けてSerif書体と、SansSerif書体、Monospace書体の3種類のフォントがあります。(他にSymbol書体もなどもあります。)
元々使われているのは、SerifとしてCaecilia、SansSerifとしてHelvetica、monospacedとしてKindleBlackboxという書体です。拙作のDX国際版用の「フォントはっく」をインストールすると、Kindle純正のフォントを/system/fonts/backupにコピーしてきます。
Kindleで主に使われているのは、本文にSerif (Caecilia)、タイトルバーなどにSans Serif(Helvetica)です。

これらをMacにコピーしてくることで、オリジナル(純正)のフォントのコピーは完了です。

フォントをマージする

ここでは、SerifのMediumにIPA P 明朝を結合させてみましょう。

元のフォントをFontForgeで開く

FontForgeのアイコンに、Caecilia_LT_65_Medium.ttf をドラッグ&ドロップするか、FontForgeを立ち上げた後に、 [ファイル] の [開く] からフォントファイルを選択して開いてみてください。

フォントの統合(マージ)

フォントファイルどうしを統合(いわゆるマージ)を行うのはとても簡単です。

まず、元フォントファイルを開いた状態で、 [エレメント(L)] の [フォントの統合(M)] を選択します。すると、ファイルを選択するダイアログが出ますので、日本語を含むフォントを選択します。僕はIPA P 明朝のファイルを選択しました。Filterという項目があるのですが、僕は”True Type”を選択してます。

フォントのkerning(カーニング)をどうするか聞かれますが、私は適当にYESを選択しています。

すると、フォントが結合できたことを確認できます。猜疑心の強いかたは、スクロールして漢字やひらがなが見えるのを確認してやってください。

True Type Fontの書き出し

[ファイル(F)] の [フォントを出力(G)]をクリックします。すると、次のようなダイアログが出ます。
ここでは、Serif_Regular.ttfとして保存しましょう。形式さえTrue Typeになっていれば、他に選択する項目はないはずです。

IPA P 明朝の場合、EMが1000と2の乗数でないという警告が出ますが、無視しても問題は特にありませんでした。

これで作業は完了です。FontForgeを終了しましょう。保存していないと警告が出ますが、書き出しを済ませてあるので、そのまま終了して大丈夫です。

フォントを確認する

念のために、True Typeフォントがちゃんと作られているかを確認してみましょう。
Macであれば、Finderでファイルを右クリックして、[このアプリケーションで開く] の [Font Book.app] を選択してみましょう。ちなみにHelveticaは、Kindleからコピーしてきた元々の状態でもちゃんと表示されないので、あまり気にしなくてもいいです。

フォントを太くする方法

IPA P 明朝などの明朝体をそのまま使うと、Kindleのスクリーンでは、かすれた感じで読みづらくなります。
こういった現象は、フォントをちょっと太くしてやることで解決したりします。
IPA P 明朝をFontForgeで開き、Ctrl-Aを押して全ての文字を選択します。選択されている文字の背景は黄色になります。

この状態で、 [エレメント(L)] の [Style] にある [Change Weight]を選択します。すると、次のようなダイアログが表示されます。

この”Embolden by”という項目の値分、フォントが太くなります。最初は50が入っていますが、文字によっては相当太くなってしまいますので、10〜20くらいの値が妥当だと思います。ここで、”OK”を押すと、書体を太くする作業が1文字づつ始まります。勝手にスクロールしないために進捗が見えず不安だとは思いますが、じっくり待ってください。この作業は意外と時間がかかります。

作業が終わったら、上のTrue Typeの書き出しと同様に、トゥルータイプ形式で書き出しをしてやってください。
ちなみに、この作業は、結合させたいフォント(この場合、IPA P 明朝のipamp.otfに対して行っておいてください。上のフォントの結合より先にすることがポイントだったりします。結合後に行うと、Kindleの元々のフォントまで太くなってしまいます。

IPAフォントなどフリーの、漢字を含むフォントの多くには標準書体しか用意されていないはずです。Bold書体は、この作業で作り出すことが可能です。Italicも、たぶんFontForgeで作ることが可能だと思うのですが、私は試していません。できたら教えていただけるとありがたいです。

Kindleにインストール

あとは、KindleをUSBでMacに接続してコピーをするのみです。何度も言うようですが、上書きでなければダメです。
入れ替えたあと、Kindleを再起動すれば、お望みの書体が手に入るはずです。