GoogleのAIモードに聞きながらマンションの玄関ドアのシリンダーを交換した(そして一度間違えた)

事情があって、知人宅のマンションの玄関ドアの鍵を交換することになった。

最初は鍵屋さんに頼むつもりで問い合わせたのだが、来てくれるのが1週間以上先だった。しかもGOALのV18シリンダーは在庫していなさそうで、まず1週間以上先に現物を見に来て、それから部材を取り寄せ、届いてからまた作業に来る、という段取りになる。概算の見積もりは10万円近く。作業員の人件費が乗ればそうなるのは理解できるが、シリンダーの交換に10万円近くは出したくなさそうだった。シリンダー交換くらいなら自分でできるはずなので、部品を取り寄せて自分でやることにした。

型番の特定

まずは何を注文すればいいのかを調べる。ドアの鍵はGOAL製だったので、Googleで「GOAL」から検索を始めたら、そのままAIモードに移行して調べることになった。

検索結果のページやAIモードの案内によると、GOALのシリンダーを特定するには次の2つを見ればいいらしい。

  1. ドア側面のフロント(フロントプレート。デッドボルトが出てくる細長い板)の刻印
  2. ドアの厚み、またはシリンダーの裏から出ている金属棒(テールピース)の刻印

フロントの刻印は「PXK」と「SK」。このドアはハンドルの上下にシリンダーが1つずつ付いている、いわゆるツーロックのプッシュプル錠で、鍵は上下共通のタイプだ。

ドアハンドルの外観。上下にシリンダー

テールピースはドアハンドルを外さないと見えない。なお、作業中にドアが閉まってしまわないよう、あらかじめU字ロック(チェーンの代わりに付いている、U字型のアームを枠側に掛けるやつ)を掛けておいた。こうしておけばドアは途中で止まって閉まりきらない。

ハンドルは、屋内側のサムターンの左右にあるネジで固定されている。サムターンは上下のシリンダーそれぞれにあるので、2本ずつ2箇所、計4本のネジを外すと屋内側のハンドルがドアから外れる。

屋内側のハンドル。上下のサムターンの左右にネジ

屋内側のハンドルを外すと、屋外側のハンドルを留めている薄い金属板が見える。屋外側ハンドルから生えているシャフトの溝に、この金属板の爪が引っかかっていて、屋外側のハンドルが簡単に抜けないようになっている。爪をマイナスドライバーで持ち上げて金属板を外すと、屋外側のハンドルが外れる。

屋内側ハンドルを外したところ。上のシリンダー側に薄い金属板と2本のシャフト

屋外側のハンドルを外すと、その裏側に、シリンダーをハンドルに固定している押さえプレートと、そこから突き出したテールピースが見える。テールピースには「V43」の刻印があった。

外した屋外側ハンドルの裏側。押さえプレートの中央からテールピースが出ている

テールピースのV43刻印

「V43」と「43」は同じなのか

ここで引っかかった。通販で売られている取替用シリンダーの仕様欄には「テール刻印:43」と書かれているものが多く、「V43」という表記は見当たらない。同じものなのだろうか。

AIモードに聞いてみると、こういう答えが返ってきた。

結論から申し上げますと、GOALのPXKやSKの取替用シリンダーを探す際において、「V43」と「43」は同一(同じサイズ・適合品)として扱って問題ありません。
「43」:テールピースの本来の長さや形状の区分を表す基本のサイズ番号です。
「V43」:交換用シリンダーのシリーズ名(例:V18シリーズ)の頭文字である「V」が、サイズ番号の前に追加されて刻印されているものです。

出典としてYahoo!ショッピングの商品ページが添えられている。もっともらしい。

それでも「43とV43は違うんじゃないか」という気がしたので、もう一度「刻印の内容にばらつきがあるのか」と聞いてみた。すると今度は、鍵の世代や製造時期によって刻印の表記にばらつきがある、古いシリンダーは「43」、V18が付いているドアは「V43」、と3パターンに分けて解説した上で、

メーカー側で「43」と「V43」のどちらを刻印していても、金属棒(テールピース)自体の長さや厚み、形状は「全く同じ寸法の同じ部品」だからです。
新しく取り付ける「GCY-261」は問題なく100%フィットします。

と言い切ってきた。ここまで自信たっぷりに言われると、まあそうなのかな、という気になる。

発注、そして現物

というわけで、テール刻印「43」のPXタイプ、2個同一キーセットである「GCY-261」を楽天で注文した。

GCY-261はすぐに届いた。早速ドアハンドルを外し、シリンダーをハンドルに押さえ込んでいる金属プレートのネジを外そうとしたところで気がついた。ハンドル裏から突き出しているテールピースの形が、届いたシリンダーのものと違う。

ドアに付いていたV43のテールピースは根元に丸いカラーの付いた太い角柱なのに対して、GCY-261の「43」は薄い板状。長さも違う。断面からして違うので、当然ながら付かない。

ついでにもう一つ分かったことがある。押さえプレートの手前、テールピースの根元にスナップリングが嵌まっていて、これを外さないとプレートとシリンダーが分離できない。AIモードの手順案内にも、参考にした通販サイトの説明にも、このスナップリングの話は出てこなかった。そして、スナップリングプライヤーがないと外すのは難しそうだった。

その場でAIモードに「V43と43は長さ違うじゃん!」と言ってみた。すると、

大変失礼いたしました!ご指摘の通り、「V43」と「43」は長さが違います。混同してご案内してしまい申し訳ありません。刻印が「V43」であった場合、買うべき品名は「GCY-261」ではなく、「PX43(BH兼用)タイプ」になります。
テール刻印「43」:テール(金属足)の長さが15mm(GCY-261)
テール刻印「V43」:テール(金属足)の長さが26mm(PX43/BH兼用タイプ)
先ほどお伝えした型番(GCY-261)はキャンセルしてください。

と、今度は「V-18 PX43 BH 取替用シリンダー 2個同一セット」を買え、2個セットで2万円台前半、商品ページに「テール部の長さは26ミリ」「刻印V43」と書いてあるものを選べ、と返ってきた。少し前に「全く同じ寸法の同じ部品」「100%フィットします」と言い切っていたのと同じ口調で、真逆のことを言っている。今度の回答が正しいかどうかも、この時点では分からない。

続けて「これの型番ある?」と聞くと、テール刻印V43の2個同一セットには「GCY-○○○」という共通の型番は存在しない、V43仕様はもともと別の「BHシリンダー」の部品をGOALが流用・兼用して組み立てている特殊な組み合わせ品で、通販では「GOAL V18 PX43 BH 2個同一セット(テール刻印V43)」という商品名そのものが型番代わりに扱われている、という回答だった。出典は楽天のリプレの商品ページ1件。回答の最後は「無事に正しいものが手に入って本当に良かったです!」で締められていた。まだ何も買っていない。

この日に分かったのは、テール刻印V43のシリンダーを買い直さなければならないこと、スナップリングプライヤーが要ること、の2点。ハンドルを元に戻して、いったん引き揚げた。

「100%フィットします」は100%外れていた。「V」はシリーズ名の飾りなどではなく、テールピースが別物であることを示す刻印だったのだ。

正解

結局、リプレ ヤフー店の「ゴール V-18 PX43 BH 取替用シリンダー 2個同一 蓄光タイプ(テール刻印V43)」を購入した。21,945円、送料無料。AIモードが最後に案内した「PX43 BH」で、商品名にも「テール刻印V43」と明記されている。GCY-261を買ったのと同じ店だが、楽天の販売ページのほうはけっこう先の納期が書かれていたので、今度はYahoo!ショッピングで買った。

二度目は、手持ちのSK11 サークリップ・スナップリングプライヤー 軸穴兼用 径10〜40mm SOCP-150を持っていった。先端の直径が1.2mmや1.4mmと細く、小さなスナップリングの穴にも入ってくれる可能性が高いので気に入っている工具だ。

SK11 サークリップ・スナップリングプライヤー SOCP-150

SK11 サークリップ・スナップリングプライヤー 軸穴兼用 径10〜40mm SOCP-150

先端φ1.2mm/φ1.4mm。小さなスナップリングの穴にも入る

前回と同じ手順でハンドルを外し、まずはスナップリングプライヤーでテールピース根元のスナップリングを外す。それから押さえプレートのネジ3本を外すと、プレートとシリンダーが分離できる。これをハンドル上部のシリンダーと下部のシリンダー、それぞれについてやる。

スナップリングプライヤーでスナップリングを外しているところ

ネジを外して押さえプレートを取ると、シリンダーが外せるようになる。指で摘まんで抜き、買ってきたシリンダーを代わりに挿し込む。

押さえプレートを外したところ。シリンダーが露出している

組み立てはここまでの逆をすればいい。押さえプレートを戻してネジを3本留め、外しておいたスナップリングをプライヤーで再び嵌める。ただ、スナップリングはプライヤーで外す前より少し広がってしまっていたので、取り付けたあとにプライヤーで軽くかしめておいた。これを上下2つのシリンダーで繰り返す。あとは屋外側のハンドルを元の場所に戻し、薄い金属板を取り付け、屋内側のハンドルを戻してサムターン左右のネジを留めれば完成だ。

所感

AIモードが役に立たなかったかというと、そんなことはない。「フロントの刻印を見ろ」「ハンドルを外してテールピースの刻印を見ろ」という、どこを見ればいいかの案内は的確で、これがなければ型番の特定にはもっと時間がかかっていたと思う。

問題は、その先の「刻印をどう解釈するか」で、出典付きで、断定口調で、間違えるところだ。ばらつきの理由を3パターンに分けて説明したり「100%フィットします」と言い切ったりする回答は、正しい回答と見分けがつかない。そして人間の側は、自分で「違うんじゃないか」と思っていたにもかかわらず、断定されると流されてしまう。指摘すればすぐ謝って真逆のことを、また同じ口調で言う。

もう一つ、AIモードにも通販サイトの説明にも出てこなかったのが、押さえプレートのスナップリングと、屋外側ハンドルを留めている薄い金属板の爪だ。どちらも現物を開けて初めて分かる話で、こういう「書かれていない一手間」があることは前提にしておいたほうがいい。スナップリングプライヤーを持っていなければ、二度目も引き揚げることになっていた。

「どこを見ればいいか」までは聞き、「見たものが何を意味するか」は現物と一次情報で確認する。常々思っていることだが、AIを使うには、AIの誤りを誤りと見抜けるだけの使用者側のスキルが要る。Vibe codingをするにもコーディングの基本的な知識は必要なのと同じだ。今回は「43とV43は違うんじゃないか」という違和感まではあった。間違いだったのは、その違和感を持ちながら、出先でAIモードの言うことを検証もせずに安易に採用したことだ。AIの言うことは精査してから採用しなければならない、と痛感した。

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