訓練(第三回)

2025年8月の話である。7月に続いて、8月も訓練のためにグアムへ渡った。

前回は場周(Traffic pattern)をひたすら反復していたが、今回は途中から科目が大きく変わる。Slow flight、Steep turns、Forward slip、Power off 180、Steep spiral、Simulated emergency approach、Soft field、Short field。チェックライドで問われる項目が一通り出てきた月だった。

2025年8月の飛行時間と訓練費用

日付 Flight Brief Rental Instr Brief Facility Fuel Total
2025/8/6 1.6 0.2 $288.00 $80.00 $10.00 $20.00 $32.00 $430.00
2025/8/7 1.2 0.2 $216.00 $60.00 $10.00 $20.00 $24.00 $330.00
2025/8/8 1.6 0.2 $288.00 $80.00 $10.00 $20.00 $32.00 $430.00
2025/8/9 1.6 0.7 $288.00 $80.00 $35.00 $20.00 $32.00 $455.00
2025/8/10 1.3 0.2 $234.00 $65.00 $10.00 $20.00 $26.00 $355.00
2025/8/11 1.4 0.3 $252.00 $70.00 $15.00 $20.00 $28.00 $385.00
2025/8/12 1.3 0.5 $234.00 $65.00 $25.00 $20.00 $26.00 $370.00
2025/8/13 1.6 0.5 $288.00 $80.00 $25.00 $20.00 $32.00 $445.00
2025/8/14 1.6 0.5 $288.00 $80.00 $25.00 $20.00 $32.00 $445.00
2025/8/15 0.5 0 $90.00 $25.00 $20.00 $10.00 $145.00

10日間で13.7時間、$3,790。今月は天候で飛べない日がなく、10日間連続で飛べた。

場周の総仕上げ

6日から8日までは引き続き場周である。9回、8回、14回と回った。

3日で31回。7月から数えるとかなりの周回数になるが、この頃には形が収束してきた実感があった。

Slow flightとSteep turns

9日から科目が変わった。Slow flightとSteep turnsである。この2つを9日と10日の2日間でやった。

Steep turnsはバンク45°を保ったまま360°旋回して、入ったときと同じ高度・速度・方位で抜ける、という科目だ。やってみると左右で難易度がまるで違う。左旋回はなんとなく高度を維持できるのだが、右旋回は2〜3回に1回しかうまく維持できなかった。

このとき一つ学びがあった。旋回から抜けるときにラダーを踏んでいれば容易く抜けられる。ただ、あまりにも容易にバンクが戻せるので、ヘディングを戻す前にバンクを戻してしまうという別の失敗をした。

セットアップが大事だというのは教官も言っていた。始める前の準備を、納得がいくまでやること。DPE(Designated Pilot Examiner、FAAから技能試験の実施を委任された審査官)が急かす人であってもそうしろ、と。

実際、うまくいかなかったときの記録を見ると、セットアップが雑で速度が上がりすぎている。そういうときは途中でマニューバの中止を宣言して、ゆるく回ってヘディングを戻した。

ForeFlightの採点基準はACSだった

前回の記事でForeFlightのDebrief機能について書いたが、この頃に色分けの意味が分かった。

ACS(Airman Certification Standards)というのは、FAAが定める技能証明の判定基準である。チェックライドで何をどこまでできれば合格なのかが、科目ごとに具体的な数値で書かれている。

ForeFlightのDebriefは、この基準に照らして判定している。高度±100ft、速度±10kt、方位±10°に収まっているか。少し超えると黄色、大きく超えると赤になる。

つまりあの色は、単なる出来映えの感想ではなく、チェックライドの合否基準そのものである。自分の飛行が試験基準からどれだけ外れているかが、飛ぶたびに可視化されるわけだ。

Forward slipという名前を知る

10日の飛行で、雲を避けているうちに滑走路が近くなってしまった場面があった。そこで教官がスロットルをアイドルにし、エルロンを右に切って左ラダーを思い切り踏み、2,000fpmで降下させた。

急に高度を落としても速度が上がりすぎない。何が起きたのか分からなかったので、そのマニューバの名前が知りたくてXに書いたところ、Forward slipだと教えていただいた。キーワードさえ分かれば、あとは自分で調べられる。オンラインの座学で聞き齧った覚えもあった。

11日には、そのForward slipを自分でやることになった。あわせてPower off 180 approach。

正直に言って、Forward slipは難しかった。ForeFlightのアプローチ評価が酷評なのはこのためで、沈下率が大きすぎたり、一貫性に問題があると判定されている。06Rで経路を伸ばされたときに左へ流されたのも良くなかった。

ただ、場周そのものは前月よりも形が収束してきていた。

エンジン故障の練習

12日はSteep spiralとSimulated emergency approach。この日が一番楽しかった。

そこそこ高度があるところで教官が「engine failure」と言ってスロットルをアイドルにする。こちらは手近な着陸可能な場所を探し、best glide(最も滑空距離が伸びる速度)の65ktを作って、そこへ向かってアプローチしていく。500ft AGL(対地高度)くらいで教官が「go around」と言ったらフルスロットルにして復行する。

手順の覚え方はABCDだと教わった。

  • Airspeed(まず速度を作る)
  • Best field(降りられる場所を探す)
  • Checklist(チェックリスト)
  • Declare emergency(緊急を宣言する)

実際にやってみると、これはかなり楽しい。エンジンが止まった状態でどこへ降りるかを考えるというのは、それまでの科目とは頭の使い方が違う。

この日で通算30.3時間になった。

Soft fieldとShort field

13日はSoft field(不整地)の離着陸。14日はShort field(短い滑走路)である。

Short fieldの手順は具体的に教わった。

離陸 — フラップ10°、ブレーキを踏んだままフルパワー、ブレーキを離して滑走開始、55ktでローテート、56ktで上昇。50ftの障害物回避を想定する。上昇率がプラスになったらフラップを戻し、その後はVyで上昇。

着陸 — フラップ30°、65kt(-5、+10の範囲)で進入し、自分が指定した地点から200ft以内に接地。接地したらフラップを戻し、ヨークを引いてエアブレーキ、タイヤがロックしない範囲でブレーキを踏んでできるだけ短距離で停止する。

セスナにABSは付いていないと教官が言うので、リバースも無くて残念ですと返しておいた。

13日にはPower off 180をやっているときに、先行の着陸機と間隔を空けようとして粘りすぎ、無理をすれば降りられるがリスキーという状態になったので、滑走路端の直前でゴーアラウンドした。

一方で進歩も見えた。Soft fieldの離着陸はまずまずできたし、場周も収束してきている。アプローチしてくる旅客機を見て「united in sight」と応答するといったATCもできるようになってきた。ただし、そういうことをしていると風に流されがちなのが課題だと思う。

この日はForeFlightが95点をくれた。

14日は訓練機に加えて着陸機、それにヘリコプターが多く飛んでいてATCが忙しかった。記録に残っている赤い右360°旋回は、めちゃくちゃ近いトラフィックがあったので教官にコントロールを渡し、ミニマムエアスピードにしたときのものである。教官が「めっちゃめちゃ近い」と言って笑っていた。

最終日、雷雲

15日は場周1回、0.5時間で終了した。

訓練中はほぼ毎回、機内にアクションカメラを回している。自作したケーブルでヘッドセットの音声を分岐して録っているので、ATCの交信も機内の会話もそのまま残る。この日のことも、その録画を確認しながら書いている。

離陸前の会話では「意外と天気は大丈夫だと思うんですよね」と話していた。この日のATISは、雲は全天を覆うovercastでシーリング(雲底の高度)は2,300ft、気温28℃、露点24℃、高度計29.81、滑走路24使用である。

ところが場周に入ってすぐ、タワーから思いがけない通告があった。

Cessna 〇〇〇〇, expect to see a full stop. The weather to the southwest is moving northeast now.

南西の悪天が北東へ移動している、フルストップにしてくれ、と。旅客機のトラフィックの後ろでベースに入り、24Lへの着陸許可をもらって降りた。

このとき僕には理由が分かっていなかった。機内では「なんでだろうなぁ」「まあ確かに動いては来てるんですけど」「もしかしたら風かもしれないですね」といった会話をしている。風のせいだと思っていたのである。

答えは着陸後に分かった。雷が光ったのだ。

短い時間のあいだに発達したらしい。教官によれば、サンダーストームになると外に出て後で帰ってくるということ自体が厳しくなる。帰れなくなったら大変である。

そして駐機場へ戻る途中、教官が指摘したことで腑に落ちた。定期便の着陸も24に指定されている。普通の状況なら、わざわざそちらを使う必要はない。飛行場として滑走路の運用方向をそちらに振っているということは、雷雲の影響がそれだけ厳しいということだ、と。

パイロットの判断で揺れるのを嫌って避ける人もいるが、飛行場全体がその向きにしているなら話が違う。

観光フライトで来ている人たちは飛べてよかった、という話も機内でしていた。数日しか滞在しない人はリスケジュールが効かない。2日後なら空いているけれど、そのときにはもう日本に帰っている、ということが起こり得る。

分割渡航で訓練している身としては、他人事ではない話である。

33.7時間

8月を終えて、通算33.7時間になった。

7月の終わりに20時間で「明らかに半分まで到達していない」と書いたが、この1か月で科目が一気に進んだ。場周の反復から、チェックライドで問われる項目の練習へ。エンジン故障を想定した練習が楽しいと思えるくらいには、余裕も出てきた。

ところで、チェックライドを担当するDPEはアメリカ人である。つまり試験は英語で行われる。

グアムの教官は日本語で教えてくれるので、その点は非常に助かっているのだが、いつまでもそれに頼っているわけにもいかない。英語しか話さない人と飛ぶ経験を、どこかで積んでおく必要がある。

ちょうどホノルルに行く用事があったので、そのついでに現地で飛ぶことにした。次回はその話を書く。

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