訓練(第二回)

前回の投稿から一年空いてしまった。訓練のたびにXにポストしていたので、それで書いた気になっていたのである。ただ、Xは流れていってしまうし、後から自分で読み返すのも難しい。記録として残すなら、やはりこちらに書いておくべきだった。

重い腰が上がったのは、先日AirVentureの記事を書いたのがきっかけである。あのときLLMをアシスタントとして使って、僕が徒然と話した内容を構成してもらうという書き方を試したのだが、これが思いのほか楽だった。同じやり方なら訓練記の続きも書けるのではないかと思った次第である。

実際、この記事も当時のXのポストとログブック、それにForeFlightのトラックログを突き合わせて再構成している。一年経つとさすがに細かいところは忘れているが、記録さえ残っていれば後からでも書けるものだと分かった。

さて、以下は2025年7月の話である。同年6月に続いて、7月も訓練のためにグアムに渡った。前回は基本操作とストールまでを習ったが、今回は場周(Traffic pattern)の反復が中心になった。

2025年7月の飛行時間と訓練費用

この月の訓練の時間と費用は次の通りだった。

Flight Time Briefing Aircraft rental Instruction Briefing Facility Fuel Total
2025/7/2 1.2 0.1 $216.00 $60.00 $5.00 $20.00 $24.00 $325.00
2025/7/3 1.2 0.7 $216.00 $60.00 $35.00 $20.00 $24.00 $355.00
2025/7/4 1.3 0.7 $234.00 $65.00 $35.00 $20.00 $26.00 $380.00
2025/7/5 0.8 0.2 $144.00 $40.00 $10.00 $20.00 $16.00 $230.00
2025/7/6 1.4 0.3 $252.00 $70.00 $15.00 $20.00 $28.00 $385.00
2025/7/7 0.9 $45.00 $45.00
2025/7/8 1.5 0.1 $270.00 $75.00 $5.00 $20.00 $30.00 $400.00
2025/7/9 1.4 $70.00 $70.00
2025/7/10 1.3 0.2 $234.00 $65.00 $10.00 $20.00 $26.00 $355.00
2025/7/11 1.4 0.2 $252.00 $70.00 $10.00 $20.00 $28.00 $380.00
2025/7/12 1.4 0.1 $252.00 $70.00 $5.00 $20.00 $28.00 $375.00

飛行が11.5時間で$3,185、地上訓練が2日で$115、合わせて$3,300である。

7月7日と9日は飛んでいない。VMCではなかったので地上訓練に振り替えた。内容はPilot qualification、滑走路誤進入の防止、visual scanningと衝突回避(7日)、14 CFRと関連出版物、Aeromedical factors(9日)だった。天候の詳細は後述する。

Ground reference maneuvers

7月2日は前回の続きでストールの反復。3日からGround reference maneuversに入った。

これは地上の目標物を基準にして、風に流されないように一定の経路を飛ぶ訓練である。Rectangular course(四角形の経路)、S-turn(道路などを挟んで左右に半円を描く)、Turn around a point(一点を中心に円を描く)の三つをやった。

風がある中で地上に対して同じ形を描こうとすると、風上側と風下側で対地速度が変わるので、バンク角を常に変え続けなければならない。頭では分かるが、実際にやると難しい。

このときの出来は、S-turnは上と下で半径が違ってしまい、四角はボチボチだが最後の辺で流されている、Turn aroundは入りをミスった、という体たらくだった。

要するに、風を読んで先回りして操作するということができていない。

Traffic pattern

4日からは場周(Traffic pattern)の反復に入った。ここから帰国までの7日間、ほぼ毎日これをやっている。

4日は海上のココス島を滑走路に見立てて練習した。いきなり本物の滑走路でタッチアンドゴーを始めるのではなく、その前段階として場周の形を覚える、という趣旨である。

後からトラックログを見返すと、この日の飛行はよく分かる。PGUMを離陸して島の西岸沿いに南下し、最南端のココス島まで降りていって、そこで場周の形をなぞってからまた戻ってきている。飛行時間は50分、平均対地速度86kt、飛行距離74NM。

高度のグラフを見ると、ココス島に着いてからの25分ほどのあいだに、1,000ft付近まで上がっては降りてくる山と谷が5回並んでいる。ただし谷は地面まで届かない。当然だが実際にココス島に降りるわけではないので、降下してきてまた上昇する、いわゆるローアプローチを繰り返していたことになる。着陸の記録も、PGUMに帰ってきたときの1回だけである。

5日から実際の場周に入ったのだが、この日は4周で中断になった。TWR(管制塔)から機体が見えなくなったと言われたのである。

後からPGUMのMETARを引っ張ってきて確認したところ、離陸は現地07:39、着陸は08:02。飛行中の定時観測(07:54)では視程10SM、雲もFEWとSCTで、数字の上では何の問題もない。ところが着陸の1分後、08:03から雨が降り始めている。

つまり観測に現れる前の段階で雨雲が近づいていて、その中に入った機体が管制塔から見えなくなった、ということなのだろう。粘っていれば降られていた。23分で切り上げたのは正しかったわけである。

熱帯の飛行場では、観測値が良好でも状況は急変する。日本の飛行場ではあまり経験しない終わり方だった。

6日は12周、8日は11周。8日は8周目で360°旋回して待てと言われ、9周目では経路を伸ばされた。旅客機の合間に訓練機が入るので、こういう指示が入る。

風に流されていたのは1周目と最後の11周目、それと360°ターンのときだった。集中が切れる時間帯に出るということなのだろう。

この日はチェックリストを誤って飛ばしてしまうことが頻発した。飛行前の手順だったような気がするのだが、当時の記録には「この日チェックリストを誤って飛ばしてしまうこと頻発」としか書いておらず、どの段階のことだったかまでは確認できない。

いずれにせよ、同じ手順を繰り返していると、やったつもりになる。読み上げているようで読んでいない。

BaseからFinalに入るときにオーバーシュートも2回やらかした。これは危ない。

なお8日は、はじめて飛行機を押して駐機場から出した。教官と左右に分かれて押す。横風は10ktくらいあった。

10日は5周、11日は8周、12日は12周。

飛べなかった日

7月7日と9日は飛んでいない。VMCではなかったからである。

VMCとは

VMC(Visual Meteorological Conditions、有視界気象状態)とは、外を目視しながら飛べる天候の条件のことである。視程が何マイル以上あること、雲からどれだけ離れていること、といった具体的な数値が14 CFR 91.155に定められている。これを満たさない状態はIMC(Instrument Meteorological Conditions)と呼ばれ、計器飛行の資格と装備がなければ飛べない。PPLの訓練は有視界飛行が前提なので、VMCでなければそもそも始まらない。

必要な数値は空域によって違う。PGUMの管制圏はClass Dなので、視程3SM以上、雲から下方500ft・上方1,000ft・水平2,000ftの間隔が要る。

これとは別に、運航の目安として使われる分類がある。規則ではなくNWSなどが用いるカテゴリで、雲底と視程の組み合わせで4段階に分けたものだ。

カテゴリ 雲底 視程
VFR 3,000ft超 5SM超
MVFR(Marginal VFR) 1,000〜3,000ft 3〜5SM
IFR 500〜1,000ft 1〜3SM
LIFR 500ft未満 1SM未満

MVFRというのは、規則上のVFRの最低要件は満たしているが余裕がない、という領域である。

実際の天候

後からMETARを引いて確認してみた。今度は日中の最低値ではなく、実際に飛んでいた時間帯の実況である。飛ぶかどうかの最終判断はブロックアウトの前と、飛びながら行うので、そのときに見えていたものに近い。

日付 飛行時間帯(現地) 視程 シーリング 気象現象 カテゴリ
7/2 12:48–13:33 10SM なし(CLR) VFR
7/3 13:35–14:27 10SM なし VFR
7/4 11:18–12:08 10SM 2,800ft 突風17kt MVFR
7/5 07:39–08:02 10SM なし VFR
7/6 08:50–09:55 10SM なし 弱い雨 VFR
7/8 09:45–10:47 10SM 2,300ft MVFR
7/10 11:55–12:40 10SM なし VFR
7/11 16:26–17:22 10SM 3,700ft VFR
7/12 07:39–08:40 10SM 5,000ft VFR

飛んだ日は9日とも視程10SM。シーリングもほとんどの日で問題ない。日中には雨が降っている日もあるのだが、飛んでいる時間帯はきれいに晴れている。スコールの合間を選んで飛んでいたということだろう。

MVFRだったのは7月4日と8日で、いずれもシーリングが2,000ft台。4日は突風17ktもあった。ちなみに4日はココス島での場周、8日は11周のタッチアンドゴーである。

飛ばなかった2日

7月7日 — 予定は正午だった。1時間ほど前の時点で既に雨が降っていて、コンディションが良くなさそうだったので教官へ確認の連絡を入れたところ、飛ぶのは難しそうなので地上訓練にしよう、という返事だった。

その判断は正しかった。雨が始まったのは10:09で、10:54には視程3SM、シーリング2,600ft。連絡した直後の11:09には強い雨で3SM、シーリング2,000ftまで落ちている。11:57に2.5SM、11:59には1.25SM。予定時刻がまさに最悪の状態だった。回復したのは13:54で、そこでようやく10SM SCT030である。

7月9日 — 予定は9時。08:02の時点で視程1.5SMの強い雨、08:13には0.75SMまで落ちた。これも飛べる状態ではない。

なお、この日は09:54には8SM、10:09には10SMまで回復している。結果だけ見れば少し待てば飛べたことになるが、8時台にあの降り方をしていて、レーダーにセルが映っている状態で「1時間後には抜けるだろう」と賭けるのは、訓練生を乗せる飛行では取らない判断だろう。

飛べない日が出るのは織り込んでおいたほうがいい。ただ、その場合に地上訓練へ振り替えられるのはありがたかった。日数を無駄にせずに済むし、料金も飛行の$300〜400に対して$45〜70とずっと安い。

なお、こういう過去のMETARはアイオワ州立大学のIowa Environmental Mesonetで取得できる。訓練の記録を後から振り返るのに便利である。

ただし断っておくと、当日の判断はMETARを見て決めているわけではない。実際には空を見て、気象レーダーの画像を見て判断している。スコールセルがどこにあって、どちらに動いているか。1時間の訓練のあいだに抜けられるのか、それとも捕まるのか。観測値は今この瞬間の数字でしかないので、それだけでは足りない。

METARが役に立つのは、こうして後から「あの日はこういう天候だった」と確認するときである。

ForeFlightのDebrief機能

10日の飛行のあと、ForeFlightの便利な機能を見つけた。

PCのブラウザでログを見るとTracklogに点数が付いているのは知っていたのだが、Debriefボタンを押すと、具体的な採点基準とフライトのデータが出てくる。

この日はRWY 06R、風は110/12。最終進入のスコアは83点で、内訳を見ると500ftから50ft AFEの区間は100点、IASの一貫性は99点と悪くないのだが、沈下率が81点、沈下率の一貫性は73点と落ちる。

翌11日の360°旋回はもっと厳しかった。Right-360のスコアが32点。進入高度の維持が31点(目標±100ftに対して実際は−168〜0ft)、進入速度の維持が34点(±10ktに対して−20〜2kt)、そして出入りのヘディングの一致が0点(±10度に対して実際−40.55度)である。

なかなか正直なもので、自分でも乱暴にアプローチしたと思っているところは、やはりスコアが低い。360°ターンのスコアが低かったのは高度の維持と、出入りのヘディングのズレが原因だった。2周目でオーバーシュートしてしまったのも効いている。

体感と数字が一致するというのは、なかなか良い。感覚だけで反省していると、どこがどう悪かったのかが曖昧なままになる。

この日は教官がSentryを持ってきていなかったので、iPad本体のGPSでTracklogを録ったのだが、意外ときっちり取れていた。Trafficを見たいのでなければSentryは要らないのではないかと思ってしまった。

左翼の燃料が早く減る

飛行前点検をしていて気づいたことがある。Cessna 172のFuel selector valveをBothにしていても、左翼の燃料のほうが早く減るように見えるのである。

最初はventが左翼にだけ付いているからかと思った。タンクの通気の取り方が左右で違えば、内圧に差が出て流量が変わりそうな気がする。

教官に聞いてみたところ、訓練機の一方のタンクのキャップは弁が付いているタイプなので、ventの都合ではなく、タンクからの配管やFuel selectorの影響ではないか、とのことだった。

前回書いたとおり、グアムでは100LLが供給されないので自動車用ガソリンを使っている。燃料まわりは何かと気になる。

着陸で指摘されたこと

12日、17回目の飛行では前半をフラップなしで、後半をフラップを下げて着陸した。途中から「今の接地は良いですね」と言ってもらえるようになったのだが、この日はまとめて指摘をもらったので書いておく。

接地 — Yokeを引くタイミングは悪くないが、引きが甘い。じわじわと引くのができていない。

上昇 — 離陸後にVy 76KIASへ調整するのが甘い。

Roll — 滑走路が近づいてきたときに、rollをフラフラさせて位置を調整しようとするのは良くない。悪くすると翼が地面に引っかかって事故になる。やるならラダーで、機体の動きは尻で感じろ、と。

高翼機のC172だからリスクは比較的低いが、低翼機だったら本当に危ないと思った。

Power — もう少しマメに調整すること。

Yokeの持ち方 — 両手で持たず、右手はthrottleに添える。ゴーアラウンドがあるかもしれないし、他のレバーを間違えて操作しないためでもある。C172のMixtureにはボタンが付いているが、他機種には付いていない。

計器 — 右パターンのときにHeading indicatorが誤っていた。滑走路を見ながら、あるいはコンパスを見て修正することも大事である。

ラダー

この時期、指摘の多くはラダーに集約されていた気がする。

ストールリカバリーでは、ラダーを踏まないとスピンに入るから危ない、と言われた。失速させるときにYawingが入っていることがあるので、ターンコーディネーターをきっちり真ん中に保つこと。パワーを引いたり足したりするときには、ちゃんとラダーを踏むこと。

自分ではターンコーディネーターにあまり頓着していなかったらしい。踏んでいるつもりなのだが、踏み込みが甘いようである。

尻で感じられるようにならないといけない。

余談:ランプで見かけたもの

PGUMは軍民共用ではないが、アンダーセン空軍基地が近いこともあってか、軍用機がランプに駐まっていることがある。訓練の行き帰りに見かけたものを二つ。

9日はBoeing C-17A Globemaster IIIを見た。テールにMcChordとあったのでどこだろうと調べたら、シアトル・タコマの南西すぐにあるジョイントベース・ルイス-マコードのことだった。

11日はランプにAirbus A330の顔をした英空軍機がいた。調べたところVoyager KC. Mk 2、つまりA330 MRTT(Multi Role Tanker Transport)である。タンカーと言いながら尾部にブームが付いていないので不思議に思ったのだが、主翼のポッドからプローブ・アンド・ドローグ方式で給油するらしい。オーストラリアが持っているAirbusベースの給油機はKC-30Aで、あちらは尾部にブームが付いている。

訓練で来ているので機体を見に行く時間はあまりないのだが、こういうものが目に入るのはグアムならではだと思う。

20時間

2025年7月の訓練を終えた時点で、飛行時間はおよそ20時間になった。

PPLに最低限要求されるのは40時間なので、数字の上ではちょうど半分である。ただ、実感としては明らかに半分まで到達していない。場周を何十周も回して、ようやく「今の接地は良いですね」と言われるようになった段階で、ソロにも出ていない。

もっとも、40時間で取れる人はほとんどいないという話は、訓練を始める前から(教官以外の方々から)聞いていた。英語ネイティブでおよそ60時間、我々のようなノンネイティブだと80時間くらいが相場だという。加えて、僕のように分割で渡航していると間隔が空くぶん延びがちだし、歳を取ると加齢によっても延びる傾向があるそうだ。

なので20時間の時点で半分に到達していないのは、そういうものなのだろうと思っている。

ただ、これから始める人は40時間という数字を基準に予算や日程を組まないほうがいい。6月と7月の総額は$6,105、飛行時間は20.3時間なので、地上訓練や入会費も含めた1時間あたりの単価はおよそ$300である。仮に80時間かかるとすれば$24,000。もちろん渡航費と滞在費は別勘定になる。

焦らずに続けるしかない。

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