enchantMOONを分解してみた


かなり斜め上のコメントが多数見うけられたため、最初に書いておきます。
本稿はenchantMOONの裏蓋を開けてまで不当に貶めるためのものではありません。基本的に、僕はガジェットバラして中身見てみるのが好きだからバラしてます。
ただ、私としては、今までの流れを見ている限り、この会社にハードウェアベンチャーだとかコンピューターメーカーとは名乗って欲しくない品質のものだという感想を持っています。
既存のコンポーネントしか使っていないなんて点を指摘するつもりはありません。配線の美しさとかそういうことを言っているのでもありません。
ちゃんとした組み立てには製品の長期的な品質を担保するための意味があるのです。長期的な品質は、客のためでもあり、ひいてはメーカーがサポートや修理で損をしないようにするためのものです。
今動くものを売ってるんだからそれで十分とか寝ぼけたことを言う人とは根本的に考え方が違うみたいですね。

巷で話題のenchantMOONですが、ソフトウェアの完成度はさておき、ハードウェアベンチャーとやらが作ったタブレットの中身はどんなもんだろうと気になって仕方ありませんでした。

特に私が気になっていたのは、その仕事の素人っぷり生産開始ギリギリになって発覚したというWi-Fiモジュールが技適の認証を通っていないというあたりの話です。
これについては、tweetしているうちにPlanexのUSBドングルを使ったらしいということが分かりました。記事を書いて下さった方もいらっしゃいます。

まぁ、こんな小っちゃいドングルを本体に内蔵していればWi-Fiの通信に差し障りがあるのも当然なのですが、USBの線を外まで引っ張り出してWi-Fi感度を改善しようとした方も現れました。で、ここで分解写真を目にして、アセンブリのひどさが気になった次第です。

ということで、enchantMOONを既に手にしていた友人から分解してもいいよということで本体を借りてくることができましたので分解してみました。

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マジックでぐりぐりして不透明の黄色いマスキングテープが貼ってある部分は、私がシリアル番号の類が写真に写らないようにするために貼ったものです。

フレキ基板の長さが合っていないことと、バッテリの右側にあるテープでグルグル巻きにされて放り込まれた小基板が大変に印象的です。正直、コンシューマー向け製品の量産品だとは思えません。
また、未実装の部品の多さもとても印象的な基板です。
液晶を留めている金属板の水色の保護フィルムは、なぜ1箇所だけ剥がされていて、他のものは貼られたままなのでしょうね。

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特に、このフレキのムリな曲げ方と押し込み方なんてひどいもんです。いつか配線がダメになるでしょう。

もうひとつ、
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このフレキのハンダ付けがものすごいです。この基板は電源ボタンとLEDだけですからどうってことは無いかもしれませんが、不良が出そうな箇所でもあります。

ちなみに子基板はアップで撮るとこんな感じ。デジタイザのボードですね。
enchantMOONの開発blogの6月23日付けにある、モーガンタッチのデジタイザーというのはコレっぽいです。”Mg”という刻印もあります。
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デジタイザのボードの下には、噂のPLANEXのUSB Wi-Fiドングルが入っています。悪くない回避策だとは思いますが、基板の影にアンテナが位置してしまっているのもWi-Fiの接続性がイマイチである一因だと思います。ましてや、本体は金属製、樹脂の窓を開けるとかするべきだとは思いますが、筐体作った後にWi-Fi周りを変更したために惜しいことになっています。

とりあえずの感想というか推測としては、既存の部品を集めてきてゴチャっとガワに放り込んで作ったモノなんだろうなといったところです。
なぜゴチャっと詰め込むことになったかというと、生産数を急に変更したために部材調達に問題が生じ、部材の変更もかけたみたいなのでそこらへんが原因じゃないでしょうか。あくまで推測ですけどね。普通の人達はこういうムチャをしませんが、それをやってしまっているのがこの機器の恐ろしいところです。

基板を取り外してみました。
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別のタブレットに使うためのものだったか、リファレンスボードだったか、enchantMOONでは使わないボタンが実装されていて目を引きます。
右側のmicroSDの上に音量調整用でしょうか、間隔をあけて2つ白いタクトスイッチがあります。また、目を引く未実装の巨大なパッド、これは何を実装する予定だったのでしょうかね。
液晶を接続するためと思しきコネクタも未実装でいくつかあります。左上には結構ムチャして取り付けたUSBレセプタクルに、Wi-Fiドングルが刺されているのが目に付きます。

基板のCPUまわり。
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どうもこの記事は私が想定していた方以外の人々も見てくださっており、意図していない受け取り方もしているみたいなので、冗長に書いときます。
ちょっと見づらいですがA10と書いてあるものがCPUです。Allwinner A10というチップで、割と中国製のタブレットやAndroidスティックで使われています。
ARM Cortex-A8という、今では有名メーカー製のタブレットでは使われなくなってしまった程度のCPUです。
その下にある同じ型のチップが4つ並んでいるのがメモリです。配線がぐにゃぐにゃうねっているのは、等長配線と言って、CPUとメモリ間の配線の長さを揃えるための工夫です。
高速デジタル伝送を行う際には普通に使われているものです。写真右上にある短辺からのみ足が生えているチップは、フラッシュメモリです。
基板自体は普通に作られている印象をうけました。

基板の裏側はこんな感じ。
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シリアルナンバーと、検品した人のイニシャルが書かれたシールが貼ってあったので、マスクするために、ここにも不透明の黄色いマスキングテープを貼りました。
CPUの裏側にパスコンと呼ばれるコンデンサが実装されているくらいで、あとは右に使われていないタクトスイッチを見つけました。近くには”HOME”とシルクで刷られていました。
絶縁のためか、透明のフィルムが貼られていて写真がテカってしまいました。

あ、基板を外すときにCPUの脇にあった液晶から伸びてるフレキの裏側も撮影したのでした。
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こっちはタッチパネル用のチップの模様です。

全体の感想としては、長さの合わないフレキ基板を使ったのはなぜだろう最初からこの部材を使うつもりだったのかなという点、えーフレキはんだづけっすかという点、なんでデジタイザのコントローラー基板は無理に押し込めてあるんだろうという点、Wi-Fiのドングルはもうちょいなんとかしてやりなよという点、の4点が気になった箇所でしょうか。
まぁ今時深圳に行ってお金出せば普通にタブレットは作れるでしょうに、どういうわけか(私は生産数変更が原因だと推測してますが)アセンブリ工程でミソが付いたのがもったいないなと思いました。
もっと写真は撮ったので興味のある方はどうぞ。